FIREを目指す丸刈り薬剤師の雑記帳

34歳でセミリタイアした薬剤師が考えたことを気分の趣くまま記録します。大体はどうでも良い事を書き連ね、時々役に立つか分からないマニアックな記事を書いています。過去と同じ内容の記事を書くこともあるかもしれませんが、どうかご容赦願います。また投資についての記事もありますが、投資判断については自己の責任において各自判断してください。

極端な相場変動を取り除くと収益が増加していく?

チャールズ・エリス氏の著書『敗者のゲーム』には、最も良い収益を示した日を少しでも逃すと長期収益が大幅に悪化することを示す図がある。そこから、株式市場に投資し続けることの重要性を説いている。一方、ナシーム・ニコラス・タレブ氏の著書『ブラック・スワン』には、最も悪い収益を示した日を少しでも避けることができれば長期収益が大幅に改善する図がある。そこから、資産の大半を短期証券などの安全資産とし、低い資産比率でハイリスクな投資案件に分散投資させる「バーベル戦略」を説いている。
どちらの主張にも一理あり、重要な考え方だと思う。しかし、個人の投資家が最も良い収益の日や最も悪い収益の日を予測することはできない。そこで2人の意見を合わせた場合の長期収益がどう変化するか計算してみたい。つまり、最も悪い収益の日と最も良い収益の日の両方を除外した場合と極端に相場が動いた日の収益を除外した長期収益の変化を計算する。ここでは1988年1月6日から2018年6月29日までのS&P500 Total Returnを用いる。1988年から2018年6月まで投資していたら、資産は19.7倍になった。これを100%として上位収益と下位収益の日、極端に相場が動いた日を除外していく。その結果が以下のグラフである。

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グラフからは上位下位収益を除外した日数が5日までの場合は100%を若干下回るけれど、それよりも多く除外していくと長期収益が緩やかに上昇していく。一方極端に相場が動いた日を除外した場合は、除外日数に応じて上下しているけれど、おおむね長期収益が改善しているように見受けられる。もちろん、相場が極端に動く日を予測することはできないけれど、大事なことがいくつか導けそうである。

1.相場の上昇を見込んで焦って精一杯投資してしまうと、予想以上に資産額が変動した時に動揺して底値で株式を売却してしまいそうである。
2.逆に相場の下落を見込んで全く投資しないでいると、予想以上に株価が上昇した時に資産の実質的な価値が予想以上に減少してしまう。
3.相場は極端に動くことが予想以上に多く起こるので、全資産に対する株式の割合を自らのリスク許容度を超えないように設定する。

結局、アセットアロケーションをそれぞれの事情に合わせて決めたり、定期的な積立を行ったりすることが有効なのではないか、というごく当たり前のことが言えただけである。

 

補足:30.5年の年平均収益率は10.3%となる。円換算では1988年1月4日1ドル120.45円、2018年6月29日110.54円だったので約10.0%となる。さらに消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は86.6から101.2となったので、物価上昇を修正した円換算のS&P500 Total Returnは年利約9.4%となる。自分が2歳になる頃から投資していたら15.5倍になっていた!しかし、その頃日本にS&P500に投資する投資信託はなかったと思う。残念!

 

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