FIREを目指す丸刈り薬剤師の雑記帳

34歳でセミリタイアした薬剤師が考えたことを気分の趣くまま記録します。大体はどうでも良い事を書き連ね、時々役に立つか分からないマニアックな記事を書いています。過去と同じ内容の記事を書くこともあるかもしれませんが、どうかご容赦願います。また投資についての記事もありますが、投資判断については自己の責任において各自判断してください。

65歳男性が一時払即時開始年金に加入するといくらの収入があるか

モシェ・ミレブスキー著『人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える』を読み終えた。長いリタイア生活を送る上で必要な資産管理法について詳しく説明されていた。リタイア生活での大きなリスクは「長生き」「インフレ」「リターンの順序」である。従来は現金、債券、株式などに分散して管理することが多かった。しかし、金融危機で債券や株式などの価格がリタイア当初に大きく下落すると金融資産の目減りが急激に進んでしまう。そこで新しい選択肢として個人年金の活用が提案されていた。その保険にはいくつか種類があり、難しく感じるものもあったけれど、一時払即時開始年金やトンチン年金の考え方は比較的理解しやすかった。

 

応用として65歳男性が一時払即時開始年金に加入するといくらの収入があるか考えてみた。
厚生労働省が公開している第22回生命表では10万人中88825人が65歳を迎える。この88825人(n0とおく)の65歳男性が資金aを持ち寄り、n0a(A0とおく)の基金を創設する。この基金への追加投資は行わず、利回りはrとする。

1年後66歳を迎えた87830人(n1とおく)が基金からxの収入を得る。この間に死亡してしまうとその後、収入を得ることはできない。
基金が利回りrで増加し、66歳を迎えたn1人にxを支払った後の基金A1

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1年後67歳を迎えたn2人が基金からxの収入を得る。
基金が利回りrで増加し、67歳を迎えたn2人にxを支払った後の基金A2

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1年後68歳を迎えたn3人が基金からxの収入を得る。
基金が利回りrで増加し、68歳を迎えたn3人にxを支払った後の基金A3

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そしてi年後65+i歳を迎えたni人が基金からxの収入を得る。
基金が利回りrで増加し、65+i歳を迎えたni人にxを支払った後の基金Aiは以下のように推測される。

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最後に47年後112歳を迎えた1人が基金からxの収入を得て、基金は全資産を支払い終える。48年後113歳を迎える人はいないので、収入を得る人はいない。したがって47年後の基金A47=0から以下の方程式が作られる。

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この方程式から年金の受け取り比率x/aが導かれる。

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このx/aをそれぞれの利回りで計算し、65歳の平均余命約20年後まで受け取った場合の内部収益率IRRを計算してみた。

r x/a IRR
0.0% 5.29% 0.54%
0.5% 5.61% 1.12%
1.0% 5.93% 1.69%
1.5% 6.27% 2.26%
2.0% 6.61% 2.83%
2.5% 6.97% 3.39%
3.0% 7.33% 3.95%


この基金に加入すると基金の利回りに応じて生きている限り1000万円あたり毎年 53万円から73万円程度の収入が得られる事がわかった。一人で運用するよりもIRRが上昇するのは毎年死亡する人がいるからである。ただし、これは概算値である。この数値が変動する主な要素は、65歳余命の変化(上昇すればx/aは減少)、基金の運用コスト(x/aは減少)、基金への追加投資の有無(あればx/aは増加)、基金開始年齢(上昇すればx/aは増加)、最低保障年数の有無(あればx/aは減少)である。人間の余命は証券の価格変動とは違い予測がしやすいので、年金や生命保険の運用というのは節度が保たれていれば必要な保障はおおむね得られるものだと感じた計算であった。保険数理はなかなか面白い。

人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える

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